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非常勤スタッフの労務管理のポイント


訪問介護事業所や訪問看護事業所の労務管理のややこしさの1つの原因として「非常勤スタッフの多さ」があります。

年次有給休暇については、非常勤スタッフにも、週の所定労働日数に応じて与えなければならないというお話をしました。

雇用保険や健康保険、厚生年金についても、非常勤だからといって加入しなくて良いというわけではありません。


まず、雇用保険の加入については、一週間の所定労働時間が20時間以上であれば、加入手続きが必要です。


また、健康保険や厚生年金については、一週間の所定労働時間が30時間以上であれば、加入手続きが必要だと思ってください。

※ 1日または1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者のおおむね4分の3以上あるか否かによって判断します(55年内かん)


定期健康診断についても、週30時間以上働く非常勤スタッフであれば実施が必要です。

この健診費用については、事業所で負担しなければなりません。

さらに、常時10人以上の従業員を雇っている事業所の場合には、就業規則の作成が必要です。

就業規則とは、「職場のルールブック」です。

就業規則に書かれた事項については、従業員だけでなく事業所も従わなければなりません。

また、事業所と従業員が個別に結んだ労働条件についても、それが就業規則よりも従業員にとって「不利」な内容であれば、それは無効になります。

無効になった箇所については、就業規則に書かれている条件が、事業所と従業員の間の労働条件となります。


常勤スタッフと非常勤スタッフでは、労働条件等が違うのが普通だと思いますので、「常勤用就業規則」とは別に、「非常勤用就業規則」も備える必要があります。


非常勤スタッフが、期間の定めのある労働契約であるという理由だけで、常勤スタッフとの労働条件に不合理な違いがあってはなりません。(労契法20条)

たとえば、常勤スタッフには通勤手当を支給しているのに、非常勤スタッフには支払わない場合などは、この条文に違反する可能性があります。

ボーナスなどについても、場合によっては、この条文に触れる可能性があります。

そのような事態にならないためにも、常勤スタッフと非常勤スタッフの仕事内容や仕事の範囲をあらかじめ、ハッキリさせておくことをオススメします。


以上が、今回の労務管理のポイントとなります。

ポイントをしっかり抑えた労務管理によって、労使トラブルや労基署からの指導を未然に防いでいきましょう。


☆発行責任者 :社会保険労務士事務所いいだ 飯田弘和

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募集・採用時の労務管理のポイント


せっかく採用したスタッフが、なかなか定着せず直ぐに辞めてしまう。

訪問介護・訪問看護事業所でよく聞く相談の1つです。


募集や採用のための選考には、時間や労力が掛かります。

そのような手間隙かけて選考したにも関わらず、すぐ辞めてしまう。

とてももったいない話です。

そこで今一度、確認していただきたいことがあります。


募集や採用時に、仕事内容や労働条件をきちんと説明していますか?


この説明が曖昧だったり、ウソが含まれていたりすれば、離職率は高止まりします。

とにかく、見栄を張ったりウソの説明をするのではなく、正直に現在の事業所の状況・労働条件を伝えるべきです。

取り敢えず入職さえさせてしまえば、後は何とかなるという考えは捨てるべきです。


法律では、雇入れの際に「書面による労働条件の明示」が義務付けられています。

明示しなければならない労働条件は5つ。


労働契約の期間

一般的な非常勤スタッフのように、3ヶ月とか6ヶ月などに期間の定めのある労働契約なのか、それとも正社員のように期間の定めがないものなのかを明示しなければなりません。

また、期間の定めがある場合には、更新はあるのか? どういった場合に更新するのか?等も明示する必要があります。


就業の場所、従事する業務の内容

これは、出来る限る詳しく説明したほうが良いでしょう。

従事する業務の内容については、ご利用者宅でのサービス内容だけでなく、業務報告書の作成や電話対応、その他の作業についてもきちんと説明すべきでしょう。

業務内容についての説明不足によるトラブルは多数発生しています。

できるだくけ詳しく、しかも書面で明示することが、後々のトラブル予防につながります。


労働時間に関する事項

始業時刻・終業時刻、休日や休暇、残業が1ヶ月にどのくらいあるのか等について明示しましょう。

当然、ご利用者の都合で始業時刻前や終業時刻後のサービス提供もあり得るでしょうから、そのことについてもきちんと説明しておきましょう。


賃金の決定・計算、支払い方法、賃金締切・支払い時期

賃金額については、あらかじめはっきりしておくべきです。

特に、求人票などに書かれている金額と異なる賃金額となる場合には、必ず、そのことについて説明を行ってください。


退職に関する事項(解雇の事由を含む)

退職時も、トラブルが発生しやすうものです。

退職手続き等もしっかり明示しておきましょう。

また、就業規則を見せて、解雇や懲戒解雇の規程を示しておきましょう。

これを示しておくことで、懲戒処分となるような行為を予防する効果もあります。


また、パートさんや非常勤の方には、

「昇給の有無」

「退職手当の有無」

「ボーナスの有無」

「相談窓口について」明示する必要があります。


以上が、今回の労務管理のポイントとなります。

ポイントをしっかり抑えた労務管理によって、労使トラブルや労基署からの指導を未然に防いでいきましょう。


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キャンセルがあった際の労務管理のポイント



ご利用者から急なキャンセルがあった場合、訪問予定のスタッフを休業させる場合もあると思います。

特に、非常勤スタッフなどは、担当ご利用者からのキャンセルがあった場合に、休んでもらうことが多いのではないでしょうか。

この場合、賃金を全く支払わなくても良いのでしょうか?


実は、休業手当として平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません。

非常勤スタッフだからといって、事業所の好き勝手にはできません。


また、非常勤スタッフには年次有給休暇を与えない事業所を見かけますが、これは違法です。

6ヶ月以上働いていて、全労働日の8割以上出勤していれば、年次有給休暇が発生します。

これは、常勤・非常勤関係ありません。


ちなみに、この「全労働日」というのは、働く予定日のことです。

常勤スタッフであれば、月~金の週5日とか、非常勤スタッフであれば、火・水の週2日とか、金曜のみとか、あらかじめ決まっていると思います。

6ヶ月間で、そのあらかじめ決まっている出勤日数の8割以上出勤していればO.K、年次有給休暇が発生します。


ただ、週5日で働く常勤スタッフと、週1日しか働かない非常勤スタッフでは、年次有給休暇日数に差が出ます。

働く日数が少ない人は、その日数に比例した年次有給休暇日数となります。

たとえば、入職してから6ヶ月後にもらえる年次有給休暇日数は以下のようになります。


週1日勤務の人は、年次有給休暇 1日/年

週2日勤務の人は、年次有給休暇 3日/年

週5日勤務の人は、年次有給休暇 10日/年

詳しくは、厚生労働省の以下のページで確認できます。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei06.html


年次有給休暇について、もっと詳しく知りたい方は、

わたしのブログ「御社の就業規則 ヤバくない?!」No.42、43号をご覧ください。

https://ameblo.jp/soudan-iida/entry-12079533840.html



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訪問介護・訪問看護については、業務報告書やカルテなどの記録の作成・記載が義務付けられています。

これらの作成・記載時間も、当然、労働時間にカウントされます。

賃金の支払い義務が生じます。


また、待機時間手待ち時間も労働時間となります。

ご利用者の急な時間変更によってサービス開始時間まで待機しているような場合、その待機時間も労働時間となります。

昼休み中の事業所内での電話番なども労働時間となります。


夜間の緊急コール対応なども、当然、賃金支払義務が生じます。

ただし、緊急コール当番等で自宅で緊急コールを待つような場合、その自宅での待機時間については、労働時間にカウントしなくてよさそうです。

病院等での「宿当直」と同様には考える必要はなく、労基署の許可や残業・深夜の割増賃金支払いの必要もありません。

(労基署に問い合せました。判断が難しい案件のようです。ただ、使用者の指揮命令下にあるとはいえない状況なので、労働時間には当たらないでしょうということでした)


ただ、この緊急コール当番にも、「緊急コール当番手当」のようなものは支払っておいたほうが良いと思います。

また、実際に緊急コールがあって、ご利用者宅へ伺いサービスを提供した場合には、そのサービス提供時間については「通常の賃金+時間外割増+深夜割増」の賃金支払が必要になります。ご注意ください。


研修の受講時間についても注意が必要です。

事業所の指示による研修や受講しなければ何らかのペナルティがある研修は、その研修時間も労働時間とみなされます。

それは、事業所内の研修であっても、事業所外の研修であっても同様です。



事業所(ステーション)は、従業員の労働時間を適正に把握する義務があります

タイムカード等での把握が難しい場合には、従業員一人ひとりにきちんと報告させるなどして、適正な労働時間の把握・管理に努めなければなりません。

これは、賃金をきちんと支払うというだけでなく、従業員の健康管理や安全管理にとっても重要なことです。

必ず、従業員の労働時間を正確に把握するようにしてください。


以上が、今回の労務管理のポイントとなります。

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訪問介護・訪問看護の場合、ご利用者宅でのサービス提供になります。

また、ご利用者へのサービスが終われば、次のご利用者宅でのサービス提供のための移動があります。

これらはすべて「労働時間」となりますが、事業所がこの間の勤務状況を把握することはなかなか難しい。

そういった中で、事業所側と従業員の側で「労働時間」についての認識が異なっていれば、いずれ大きなトラブルへと発展します。

そこで今回は、訪問介護・訪問看護について、どこまでが労働時間となるのかを考えていきたいと思います。


訪問介護・訪問看護の労働時間として、一番問題となるのは移動時間でしょう。

まずは、労働時間としてカウントしなければならない移動時間を挙げていきます。

①事業所(ステーション)からご利用者宅への移動時間

②ご利用者宅から次のご利用者宅への移動時間

③ご利用者宅から事業所(ステーション)への移動時間

以上3つの移動時間については、すべて「労働時間」としてカウントします。

ということは、この移動時間について、賃金を支払わなければなりません。

ただし、ご利用者宅でのサービス提供中の賃金と移動中の賃金に差をつけることは可能です。

たとえば、サービス提供中は時給 ¥2,000、移動中は ¥1,000など。

ここで気をつけていただきたいのが、移動中の賃金も、各都道府県の最低賃金を下回ることはできないということ。

ちなみに、当事務所のある東京都の場合、最低賃金は「時給 ¥958」ですので、移動時間中も時給¥958以上支払わなければ違法となります。


では、直行直帰などの場合はどうなるのでしょう?

自宅から直接ご利用者宅へ向かう移動や、ご利用者宅から自宅へ向かう時間についてはどうでしょう?

この場合には、労働時間には当たりません。

通勤時間として扱われます。

ですから、これらの移動時間については、賃金支払い義務は発生しません。

もちろん、事業所独自で賃金を支払うのは構いませんが、法的な支払い義務はありません。


以上が、移動時間についての労務管理のポイントになります。

ポイントをしっかり抑えた労務管理によって、労基署からの指導や労使トラブルを未然に防いでいきましょう。



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「訪問介護・訪問看護 労務管理のポイント」

本日より、連載スタートします。

社会保険労務士であるわたくし、飯田弘和が訪問介護・訪問看護事業所での労務管理のポイントについて解説していきます。

第1回目は、「移動時間についての労務管理のポイント」

ぜひ、ご覧下さい。